長い資料の要点を、書かれた場所つきの3行で聞く

会議の前に20ページの資料が届いた。全部読む時間はないのに、AIに要約させた文をそのまま信じてよいのかも分からない。
この記事では、AIに要点を3行で聞き、1行ごとに資料のどこに書いてあるかを確かめる「要点3行カード」を作ります。
この記事の通りにやると、次の3つが手に入ります。
- 資料の要点3行と、それぞれが書かれた場所
- AIの要約の誤りに、会議の前に気づきやすくなる確かめ方
- 要約に任せず自分で読むべき場所(3か所まで)
「要約して」の答えは、きれいなほど確かめなくなる
たとえば、会議の前に届いた20ページの資料を、AIに「要約して」と頼んだとします。返ってきたのは、読みやすい5行の文です。安心して会議に出て「通信費の補助は増えるんですよね」と言ったら、資料には「今と同じ額にする」と書いてあった。そんな場面です。
AIの文は、合っている行も間違っている行も、同じようにきれいに並びます。読んだ印象だけでは、どの行が違うのか分かりません。
IPA(情報処理推進機構)は、生成AIがでたらめを答える現象は「ハルシネーション」と呼ばれ、完全に防ぐ方法はまだ分かっていないとして、使うときも注意と確認を怠らないよう呼びかけています(IPA「AI利用者のためのセキュリティ豆知識」)。
この記事で照らし合わせる記録は、資料そのものです。そのために、AIに要点を頼むときは、1行ごとに「書かれている場所(ページや見出し)」と「原文の一文(資料の文をそのまま抜き出した一文)」を付けてもらいます。場所と原文があれば、1行を確かめるのに資料を先頭から読む必要はありません。その場所を開いて見るだけです。
要点を3行にするのは、1行ずつ場所を開いて確かめられる量に抑えるためです。この3行と場所、確かめた結果を1枚にまとめたものを「要点3行カード」と呼びます。
始める前に:その資料をAIに渡してよいか
仕事の資料をAIに渡す前に、会社にAIの使い方の決まりがあるかを確かめます。決まりがあればそれに従い、分からなければ上司や担当の部署に聞きます。
IPAは、インターネット経由で使うチャットAIに営業秘密を教えないよう注意しています。やりとりが運営企業のAIの学習に使われる場合があるためで、サービスの規約や設定を確かめると、入力を学習の対象から外せることもあるとしています(IPA「AI利用者のためのセキュリティ豆知識」)。お客さまの名前などの個人情報が入っている場合も、渡す前に消します。
渡し方は、PDFなどのファイルを添付できるAIなら添付し、できなければ資料の文字をコピーして貼ります。文字を貼るとページ番号が消えることがあるので、その場合は見出しの名前で場所を書いてもらいます。AIに渡せない資料は、目次と見出しを自分で見て、目的に関係しそうな場所を3か所まで選んで読みます。
4つの手順で「要点3行カード」を作る
時間がないときは、手順1と手順2だけで構いません。AIに頼むのは1回、確かめるのは3か所です。
手順1 読む目的を1行書き、要点3行を「場所と原文つき」で頼む
- AIに任せる
- 資料から、目的に関係する要点を3行にまとめ、それぞれに書かれた場所と原文の一文を付ける
- 人が決める
- 何のために読むかを1行で書く(例:明日の会議で、賛成か反対かを決める)
- 確かめ方
- 3行すべてに、場所と原文の一文が付いているか
次の資料を読み、目的に関係する 要点を3行にまとめてください。 ・目的:(例:明日の会議で賛成か 反対かを決める) ・1行ごとに、書かれている場所 (ページや見出し)と、資料の 原文の一文をそのまま付ける ・資料に書かれていないことは 書かない。推測したことには 「推測」と書く (ここに資料を添付するか貼る)
目的を書くのは、同じ資料でも、目的によって大事な行が変わるからです。「内容を理解する」のような広い目的ではなく、「会議で何を決めるか」「自分の仕事の何が変わるか」のように、読んだあとにすることを書きます。前の版から変わった点を知りたいときは、目的にそう書き、前の版も一緒に渡します。場所は、新しい版のページや見出しで書いてもらいます。
手順2 3行を、資料の場所と照らして○×を付ける
いちばん大事な手順です。AIが示した場所を開き、原文の一文が本当にあるか、要点がその一文と同じ意味かを見て、行ごとに○か×を付けます。原文の一文の一部を、PDFやブラウザーの検索で探すと早く見つかります。
- AIに任せる
- ×が付いた行を、資料の原文に合わせて書き直す
- 人が決める
- 示された場所を開き、原文があるか、要点と同じ意味かを見て○×を付ける
- 確かめ方
- すべての行が○になったか。場所が見つからない行は×にする
×を付けた行を、資料の原文に合わせて 書き直してください。 ・×の行:( 行目) ・資料の原文:(ここに貼る) ・原文にないことは足さない
AIが示した原文の一文が、資料のどこにも見つからないことがあります。そのときは、その行を×にして、要点そのものを疑います。
手順3 自分で読む場所を、3か所まで決める
3行に入らなかったことの中にも、目的に関係する大事な部分があります。そこだけは、AIの要約ではなく自分で読みます。
- AIに任せる
- 目的に関係するのに要点3行に入らなかった箇所を、場所と理由つきで3つまで挙げる
- 人が決める
- 挙げられた中から、実際に読む場所を決めて自分で読む
- 確かめ方
- 読んだあと、要点3行に足すことや直すことがないか
目的に関係するのに、要点3行に 入らなかった箇所を3つまで挙げて ください。 ・場所(ページや見出し)と、 なぜ読むとよいかを1行で付ける ・資料にない箇所は挙げない
手順4 会議に持っていく1枚にまとめる
- AIに任せる
- 要点3行・読んだ場所・自分の意見と質問を、1枚のカードに整える
- 人が決める
- 意見と質問は自分で書く
- 確かめ方
- 質問の答えが資料に書かれていないか、資料の中を検索して確かめる
次の内容を、会議に持っていく 1枚のカードに整えてください。 ・要点3行(○を付けたもの) ・自分で読んだ場所と、分かったこと ・自分の意見:(ここに書く) ・質問:(ここに書く) ・文は短くする。資料やこのメモに ない言葉を足したら(足した)と書く
質問を会議で出す前に、その答えが資料に書かれていないかを検索します。書かれていれば、質問ではなく「○ページのこの点は、こういう意味でよいですか」という確認に変えられます。
記入例:「要約して」の5行と、要点3行カード

記入前の5行は、どれももっともらしく見えます。記入後は、1行ごとに場所を開いて確かめたことで、3行目の「通信費の補助は増える」が、12ページの原文「通信費の補助は、現行の月額を据え置く」(今の月額のまま変えない、という意味)と違うと分かりました。原文に合わせて「今と同じ額」に直しています。
2行目も、記入前の「前日まで」が、原文では「前日17時まで」でした。要約で消えやすい細かい条件も、原文と照らすと拾えます。会議で出す質問は、資料を検索して答えが書かれていないことを確かめてから、カードに残しました。
続けると、読む時間が「決めるための時間」になる
要点3行カードを続けると、資料を先頭から読む時間が、決めるために必要な場所を読む時間に置き換わっていきます。AIの要約を使っても、会議で話す内容の根拠を「○ページに書いてあります」と示せるので、自分の発言に自信を持ちやすくなります。
うまくいかないとき
AIが場所を付けない、ページ番号がずれている。 ページ番号のないファイルでは、見出しの名前で場所を書いてもらいます。ずれている場合は、原文の一文の一部で検索して探します。それでも見つからない行は×にします。
資料が長すぎて、途中までしか読まれていない気がする。 AIに「資料の最後の見出しを書いてください」と頼み、資料の本当の最後の見出しと照らします。違っていれば、資料を章ごとに分けて、目的に関係する章から渡します。
○×を付けても、何を決めればよいか分からない。 手順1の目的がぼんやりしていることが多いです。「会議で賛成か反対かを決める」「自分の担当の作業が変わるかを知る」のように、読んだあとにすることが入った1行に直してから、手順1をやり直します。
次の一歩
次に長い資料が届いたら、手順1と手順2だけ試してみてください。3行のうち1行でも、場所を開いて原文と照らすところまでで構いません。
会議が終わったあとは、決まったことを残す段階です。noteの記事「会議のあとの「あれ誰がやるんだっけ」を減らす」で、AIにまとめを頼む前に4つの欄を決めて、担当と期限の抜けを防ぐ手順を紹介しています。